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2022.4.5
          日本再生のための「プランB」医療経済学による所得倍増計画

                      医療経済学者 兪 炳匡(ゆう へいきょう)さん

 本書の主眼は、失敗する可能性の高いプランAと並行して、実行可能な「プランB」の具体案を
提言することです。何より、プランAより確実に、プランBは「日本の全住民の衣食住を充足させ
る」必要があります。このようにプランBは、プランAが失敗した時の保険・セーフティーネット
としても機能します。
 さらに言えば、プランAが「勝ちを増やすこと」を目指す一方、プランBは「負けを減らすこと」
目指しています。国(マクロ)単位で見れば、プランAは高度経済成長期以来の「輸出と企業の設
備投資の増加」を通じた国内総生産(GDP)増大を目指しています。一方、プランBは「地方(
ないし国内)から東京(ないし国外)への富の流出を減らす」ことと内需拡大(とくに家計消費の
増大)を目指しています。個々の組織(ミクロ)単位で、プランAが目指すのは、利潤率と株主配
当の最大化です。対照的に、プランBが目指すのは、「将来生き残る産業・職種における安定した
雇用創出」と「実質賃金(ないし生活水準)の向上」を最大化することです。・・・・・

      (集英社新書「医療経済学による所得倍増計画」p8-4〜15 より引用」)



女性労働と商業教育の課題

 男女雇用機会均等法成立以後、女性労働が新たな時代を迎えている。「女性活躍社会」のかけ声は、
労働力不足を女性で補わなければならない、という必要に迫られた政府の提案である。労働現場では
すでに職場の「花」と呼ばれた時代から頼れる存在へ、女性の意識も「ドボジョ」「農業女子」へと
変化してきた。問われているのは、政府や企業の本気度、時代が求める女性労働の質的転換と環境づ
くりである。
 地域産業において商業科卒業生は、「即戦力」としての評価は高い。厳しさが増したとはいえ、事
務職求人の中心的地位は揺るぎはない。卒業生の活躍によって「事務職といえば商業高校」は定着し
ている。しかし就職後、数年経過した彼女たちは、事務職の置かれた地位の低さに気づく。それはな
により賃金である。労働者派遣法改悪以来、事務労働の派遣・パート比率は高く、低賃金がつづいて
いる。さらにITC技術は銀行業務をはじめ、多くの事務労働を女性から奪った。
 文書作成、通信、計算処理はコンピュータが担い、さらに株式の相場予想、会計・財務分析もAI
が行う時代である。簿記・情報の教育を否定するものでないが、商業高校の賞味期限はまもなく切れ
る。今、商業教育に求められているのは、目を学校の外、地域社会、地域産業に向けることである。
銀行・大企業への就職を第一とする商業教育から、新しいビジネスモデルの創造、地域資源を活かし
た女性起業家の育成、少量多品種時代が求めるスモールビジネスの担い手である。
 現行の学習指導要領の科目「ビジネス経済応用」で起業家教育の一端を散見することができる。し
かし内容的には起業家の育成ではなく、知識の羅列である。起業家教育の視点を取り入れることの意
義と実践課題が抜けている。中学を卒業したばかりの生徒たちにまず教えるべきはビジネスの面白さ
と可能性であると提起し、2017年の夏の全国集会で実践報告「Wクリップ」と「ビジネス観察ノ
ート」でその方向性を示した。
 時間的な制約から十分な成果を確認するまでには至っていないが、画一的な授業とは異なる学びが
あると確信している。生徒たちのとりくみの一端を下記サイトでご覧いただければと思う。